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石川県加賀市、山中塗に見る樹脂製塗装弁当箱の製造プロセスと技術

先日、樹脂製塗装弁当箱の産地である石川県加賀市山中温泉地区に取材に行ってきた。

山中温泉は、1300年前に高僧行基によって発見されたという言い伝えがあるほど古い歴史を持つ地域。

最寄駅名にもなっている「大聖寺」の由来は、加賀藩の分藩、大乗寺藩という藩名。十万石の城下町だったそうで、今でも街の区画や跡地からその名残を楽しむことができる。

そして、古九谷発祥の地でもあります。

江戸時代前期に有田で製法を学んだ家臣(後藤才次郎など)が当時の九谷村(現在の加賀市)で製陶をはじめたことを起源とする九谷焼。製陶法などについては諸説あり、「古九谷」という呼び名については、文政年間の頃に開窯した吉田屋窯において、久谷村でつくられた古い時代のものを「古九谷」と区別したのが始まりと言われている。

大聖寺駅から歩いて7分ほどにある、古九谷の杜親水公園内には「石川県久谷焼美術館」があった。

樹脂製塗装弁当箱とは、いわゆるプラスチック製の本体に塗り加工がされてあるお弁当箱のこと。現在、国内販売される塗装の樹脂製弁当箱の大多数が、石川県加賀市の山中温泉地区で製造されている。加工した天然木に漆塗りを施した伝統的な木製漆器に対し、プラスチック素地にウレタン塗装をしたものは「近代漆器」とされ、私たちが普段目にする塗装の樹脂製弁当箱はこれにあたる。(今回取材させていただいたOEMメーカーの1つ「ケィクラフト」社のショールーム。様々な企業の見覚えのある型のお弁当箱がたくさん並んでいる)


樹脂素材そのままだと、ABS樹脂ならクリーム色、ポリプロピレン樹脂なら白半透明なので、着色が装飾の大きな役割を担っています。「内部着色」は、樹脂の中に染料や顔料、着色剤などの色材を混ぜこむ着色方法。色ムラが出にくく均等に着色され、色がはげたりすることもない。お弁当箱全部(外側も内側も)が同じ色のときは、主にこの着色法。

例えば、この2つをお弁当箱を比べてみると、内側と外側では色が違う。表面に塗り加工が施されているからで、これが外部着色だ。

(写真ではわかりにくいが)奥の黒い方は光沢があり、手前の水色は艶消しの加工がされている。色だけでなく、テクスチャーの違いが出せるのも、塗り加工ならではの特徴である。

 ①企画

まずは製品が企画される。ここで成形品の形や色、模様などが決まる。山中地区は、企業からの依頼に基づいて製造を請け負うOEMが主だが、ここでメーカーとの試行錯誤やキャッチボールを重ねて成形物の具体をつくりあげていく。また、1990年代に地元漆器店「たつみや」がHAKOYAブランドを立ち上げ、オリジナル商品の企画製造も本格的に行われるようになった。

② 成形

本格的な商品の製造のスタートとして樹脂で成形品がつくられる。木製の木地にあたる。金型という金属塊を形取り、その金型で樹脂を成型する。金型のデザインが製品の形状を決めるため、高い創造性が求められる。加工法は、主にプレス加工とインジェクション加工があるが、インジェクションが主流。この加工法によって、生産性が高まった。


③塗装


成形された樹脂の素地に、化学塗料をエアスプレーで塗布し、100度で30~60分間、熱風乾燥を施す。ここで驚きなのが、職人の手で1つ1つ丁寧に塗装が仕上げられていくことだ。ロボットの導入により、一度に数個の塗りも可能になったが、複雑な形状のものは職人の手仕事によってきめ細かくチェックされ、塗りが施されていく。

④蒔絵
塗装された商品に加える印刷加工。シルクスクリーン印刷が中心のほか、デザインを分版出力して1版ずつ重ねる多色刷りや、金銀粉や色粉を用いたグラデーション表現や、立体感の出る盛絵、縁取りなど、手作業だからこそ、繊細で豊かなデザインが可能になる。

 外部着色である塗り加工が、内部着色では表現できない色付けのバリエーションを一気に広げてくれる。

お弁当箱をまるで雑貨のように私たちが目でも楽しみ、選ぶことができる大きな理由の1つがこれだ。山中塗の技術が、ここで大いに生かされている。

今まで、なんとなく眺めてきたお弁当箱の表面デザイン。その工程を見てみると、実は裏側にはいくつもの職人の皆さんの技術が生かされていた。それを知るだけで、お弁当箱を選ぶのが、もっと楽しくなるような気がする。

 

 

『くらしの図鑑 お弁当』(翔泳社)

お弁当箱、おかずカップ、便利グッズ、持ち帰り弁当、冷凍食品…お弁当にまつわるいろいろなものやコト。その歴史や背景を取材してまとめました。大正時代や昭和初期の弁当レシピの再現や、お弁当を気軽に手軽に実践できるアイデアもたくさん。山中地区の取材の様子を盛り込んだ「樹脂製弁当箱」の変遷も収録。見て、読んで楽しい、一冊です。

2016年3月18日発売。

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