「栄養でバランスのとれたお弁当」とは何か

School Shames Mom Who Put Oreos in 4-Year-Old Daughter’s Lunch

http://www.takepart.com/article/2015/04/30/school-shames-mom-over-oreos-daughters-lunch?cmpid=foodinc-fb

コロラド州のとある学校での話。Leeza Pearsonさんは4歳の娘のプリスクールのお弁当に、チーズをちょっとはさんだサンドイッチとオレオの小分けパックを持たせたわけですが、先生から「あなたが持たせたのお弁当、ちょっと栄養バランス悪いですよね」とほのめかすお便りつきで、オレオを娘が口も付けずに残してきたことで(先生に食べないように言われたそうで)問題勃発。という記事。

「娘のお弁当の中身は、先生が関わるとこじゃないでしょ。学校が思う娘が健康的であることと、私が思う健康的は違う。これは、私とかかりつけのお医者さんとの話で、学校とする話じゃない」というのがLeezaさんの主張。皆さんのご想像通り、アメリカ国内で、議論を呼んでいるそうです。
こういった問題は、日本でも少なからずあるような気がします。私自身、子どもたちを幼稚園に入園させて間もなかった頃、保護者会の中で、園長先生がお弁当指導という内容で、どんなものを持たせたら良いか、などを話していました。内容は人それぞれ、受け止め方が違うだろうと思います。
バランスのとれたお弁当の定義は、おそらく各国ごとに違います。10年以上前、1年半ほどアメリカに住んだ頃、娘たちは公立の小学校に通っていて毎日お弁当を持参しました。私はいわゆる日本式のお弁当を持たせていたので、「それはなにが入ってるの!?」と同級生にそれは驚かれて毎日お弁当をのぞきにくる、と娘たちが話していました。あれから日本の「Bento」は世界で名を馳せ、さまざまなおかずが入っているそのスタイルはもはや珍しいものではなくなったことでしょう。
「This is a public school setting and all children are required to have a fruit, a vegetable and a healthy snack from home, along with a milk. If they have potatoes, the child will also need bread to go along with it,」
「フルーツ1種類と野菜1種類と、ヘルシーな軽食と、牛乳」。この「snack」がくせ者ですね。フルーツよりは野菜もう1種類とか、牛乳よりもお魚でタンパク質とりたいわね、って方もいるかもしれません。
「ジャガイモを持たせるなら、パンも一緒にね」、って私の感覚ではほぼラーメンライスじゃん、と感じますが、これはもう食文化の違いで、良い悪いの議論ではない。ここでムキになって比較論を戦わせても、ヒステリックで不毛な感じがします。
これは、国ごとどころの話でなく、各家庭にも当然通じるものです。

弁当と日本文化(Bento (Lunch Box) and Japanese Culture)

スペイン・マドリード国立外国語学校助教授/日本学研究所のMaria RODRIGUEZ DEL ALISAL(マリア・ロドリゲス・デル・アリサル)による、日本の弁当文化の考察です。1994年のものですが、とても面白く、大変参考になる内容です。マリアさんは

「日本人の母親を持つ子供たちは、別に問題もなくおいしそうなお弁当を可愛らしい箱に入れて持ってきて、それを食べます。しかし両親が外国人の場合、あるいは国際結婚で母親が日本人でない子供たちは、たいていアルミホイルに包んだだけのものや、金属の大きなランチボックスに入れたものを持ってきます。」
とし、ある外国人のお子さんが毎日ハムサンドをもってくるのだが、毎日ほとんど手を付けずに残す。先生が尋ねると、自分はハムが嫌いだが、お母さんがそれを知っていても毎日持たせる。お母さんは「好き嫌いをせずに何でも食べられるようにならなくてはいけません」と言う、と語ったことを記しています。これらの例から

「外国人の母親たちは子供が好き嫌いがなくなるよう、特に、嫌いなものを食べられるように、躾けに努力しています。それに反して日本人の母親たちは、子供たちが喜び、その食欲を増すような可愛い弁当を作るよう、学校から指導されているのです。」

とマリアさんは考察しています。

私自身は、子どものお弁当には基本的に嫌いなものは入れません。嫌いなものを克服するなら、集団で限られた時間の中で食事をするタイミングでなく、自分の家の夕食ですればいいと思うから。お弁当で残してしまったら、帰宅したときにはもうタダの捨てる生ゴミです。家で一緒に食べていれば、子どもがそのときは食べられなくて残しても、誰か大人が食べればいいので、食べ物を無駄に生ゴミにせずに済む。我が家の息子のお弁当に入る緑の野菜は、喜んで食べるブロッコリ−かスナップインゲンか、さやいんげんがほとんど。ワンとは言わないまでも、まあこのスリーパターンです。それ以外の緑の野菜は、家で食べるようにしています。

食事は基本的に、我が家は1日3回します。私は栄養学を専門的に学んでいないので、確固たる正しい栄養バランス!などは正直なところ分かりません。1日の3度の食事で、お肉やお魚や、野菜や、ごはんなんかを、自分の中でなーんとなく「栄養バランスがよい」感じでおいしく食べられたらいいなあ、と思って毎日家族に食事を作っています。そしてそれは1日だけでなく、365日、そして何年も続いていきます。食事制限などの必要性がないためにできることです。家族が健康でいてくれることにとても感謝しています。

とまあ、お昼のお弁当1つだけで、推測はできても、その家庭の食事が「健康的か」どうかを判断することはできませんね。というとりとめのない話ですみません。

投稿者: 野上優佳子_YUKAKO Nogami

料理家・弁当コンサルタントとして新聞、雑誌、TV、ラジオ、ウェブ、全国各地での講演など多メディアで活動中。「楽しく作って毎日おいしい こどものおべんとう」(成美堂出版)を始めお弁当などをテーマにしたレシピ本の著書(20冊以上)、レシピ本の企画制作、ワークショップ、弁当箱のプロダクト開発や商品アドバイザーなども行っている。 35年以上お弁当を作り続け、300個を超えるお弁当箱を使用した経験に基づき、実際に日々お弁当を作る目線からの、実用性と汎用性の高いレシピと洞察が好評を博している。私生活では2女1男の母。1972年生まれ。 Instagram(http://instagram.com/yukakonogamis/)ではお弁当を詰める様子やレシピの動画を日々更新中。 国立研究開発法人水産研究・教育機構「SH“U”N project(サスティナブルでヘルシーなうまい日本の魚プロジェクト)」外部レビュー委員。東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー。東京学芸大学教育学部国際文化教育課程日本研究卒業。

「栄養でバランスのとれたお弁当」とは何か」に2件のコメントがあります

  1. 私も10年ほど前、アメリカのプリスクールに通う娘に日本式のお弁当を持たせていました。やはり同級生に興味津々覗かれましたが、中には冷やかす子もいたようで、娘にはみんなと違うお弁当のせいで、少し辛い思いをさせてしまいました。当時の私は体にいいものを!日本の食文化を!と言う気負いしかなく、お弁当は楽しみである、という基本的なことを忘れていたと思います。そんな娘も今は日本の中学に通っており、また私が毎日お弁当を作っています。基本的な栄養の勉強をしたこともあり、おかずの半分は野菜にするようにしていますが、とにかくお弁当箱を開けた瞬間に少しでもウキウキできるように、色づかいや詰め方など日々研究しています。ただ、できるだけ加工品には頼らないようにしています。SNSではキャラ弁に凝るあまり、子供の体に負担のかかりそうなものばかり使っているお弁当も見受けられます。家庭それぞれの方針があるでしょうが、考えるきっかけとしてそういうところを見てくれる先生はありがたいと思います。そうでなければ、仮に本当に偏っていたとしても、誰も指摘してくれる人はいないので。長文失礼しました。

    1. コメントありがとうございます。私もすっかりキャラ弁反対でおなじみになってしまいましたが(笑)、子どもへの思いの表現の仕方は、本当に人それぞれだと思います。

      私は、食べる人がおいしい、というのがお弁当のゴールで、お弁当の主役は作る人ではなく食べる人だと思っています。あくまで個人的見解です。

      きっと、pinedepoさんのお子さんは、お母様の心のこもったお弁当を毎日召し上がって、幸せですね!

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