私の大好きな言葉の中に、京都の名店【辻留】の2代目、料理人・辻嘉一さんがかつて家庭料理について仰っていた言葉があります。
「家庭の料理は、日本料理にかぎって言えることは、なるべく平凡な料理をお作りになることを、おすすめ致します」そして、能楽の奥義を例に用いながら
「動きの少ない能楽のように、家庭料理も見た眼の変化を追い求めてはなりません。それよりも、気持ちよく、楽しく、おいしく頂くように心を込めて、お作り頂きたいのであります」
フランス料理の権威・辻静雄さんは、「料理人という職業とその人たちが作る料理は、その時代の金持ちや権威者のためのものだったけれども、その人たちの力が弱まってコックさんたちを抱えられなくなって、レストランというものが盛んになったのですね」と書いていらした。キュノルンスキーの4分類説は、フランス料理にかぎらず、どこの国にも当てはまり、これは何何料理だと断定は難しく、「この料理は、こういうところで食べられることもありますよ」と言えるに過ぎない。そもそも料理とは、あくまで一つの現象に過ぎず、一面を取れば非常にその場限りのものであり、ただそれだけのことだということも理解して料理人にならねばならぬ、と。
家庭料理とは、を思うときに、いつもこの2人の言葉がふと思い浮かびます。誰かが作って、お皿に盛られて、誰かが食べておしまい。時には作っても、誰にも食べてもらえぬものもある。
その一方で、ずっとずっと、料理にまつわる思い出や風景が心に生き続けます。和食礼賛の風潮高まった1年でしたが、和食とはなんだろうと考えるたくさんの機会がありました。
日々の積み重ねや年中行事、家族の節目節目の中にいつもあり、家の真ん中にある食卓に並ぶ家庭料理とは、変に難しく、理屈をこねくり回すよりもまず、気持ちよく、楽しく、おいしく、食べる人を思い、作る人を思い、作っていただくことができたら、何より幸せだろうと思います。
【ナスラックキッチン】料理家の先生が綴る料理ブログ
おせち準備はここからが本番
http://www.nasluck-kitchen.jp/blog/index.asp?tcid=03
おせちにおススメのチキンロールのレシピも一緒にご紹介しています。